香りを選ぶことは、自分を知ること。

Author:MY ONLY FRAGRANCE

香りを選ぶことは、自分を知ること。

ホテル「KANSEI京都八条」に聞く、五感から始まる「心地よい時間」

日常の中で、「自分は何が好きなのか」を立ち止まって考える時間は、意外と少ないものです。どんな香りが心地よいのか、どんな味をおいしいと感じるのか、どんな空間にいるとほっとするのか。

京都駅からほど近い場所にあるホテル「KANSEI京都八条」は、そんな自分自身の感覚に気づくきっかけをつくるホテルです。ホテルKANSEIのコンセプトは「五感で、自分を知る宿」として、KANSEI京都八条では香りを軸に、「香りで巡る和ごころの旅」を提供しています。フレグランスBarで好きな香りを選んだり、香りとお酒のペアリングを楽しんだり。ホテルで過ごす時間の中に、自然と五感を意識する体験が散りばめられています。

今回お話を伺ったのは、KANSEI京都八条の空間デザインやコンテンツ企画に携わるLumuha株式会社 代表取締役の佐藤唯さんと、ホテルの開発・運営を担う株式会社オルカ 取締役の西島紗織さん。「自分の感性に気づく場所」をどのようにつくったのか。そして、香りが私たちの日常や人生にどのような変化をもたらすのか。ホテルをつくる側と、日々運営する側、それぞれの視点からお話を伺いました。

目次

「ホテルをつくりたい」から始まった、二人の出会い

KANSEI京都八条について伺う前に、まず気になったのが佐藤さんと西島さんの出会いです。お二人が初めて顔を合わせたのは、現在のように一緒にホテルをつくるようになるよりもずっと前のこと。共通の知人を通じて出会い、話をする中で見えてきたのが、「ウェルビーイング」という共通の関心でした。

当時から、ホテルという場所に可能性を感じていたお二人。ただ泊まるための施設ではなく、そこで過ごす時間や、働く人、訪れる人の幸福度まで考えた場所をつくりたい。そんな考えが、後のKANSEIにつながっていきます。

佐藤さんが得意としていたのは、コンセプトづくりや空間・クリエイティブの設計。一方、西島さんはホテル業界で培った経験をもとに、実際にお客様を迎え、ホテルを運営していく側からKANSEIを形にしています。異なる強みを持ちながらも、お二人に共通していたのが、「ホテルを通して、人のウェルビーイングに関わりたい」という思いでした。

香りから始まったのではなく、「ウェルビーイング」から始まった

KANSEI京都八条は、「香り」をテーマにしたホテルです。しかし、意外にも最初から「香りのホテルをつくろう」と決めていたわけではありませんでした。原点にあったのは、「五感を通して自分を知る」という考え方です。

「ここで過ごしているだけで、自分はこれが好きかもしれない、と気づけるような空間にしたかったんです」

ホテルは、眠る、食べる、景色を見る、香りを感じるなど、さまざまな感覚を使って時間を過ごす場所です。そこで、五感を通して自分自身の感覚を知ることができるホテルをつくろうと考えました。その中で京都八条では、京都という土地にはお香や香木など香りにまつわる文化や商品が多いことにも着目し、「嗅覚=香り」を一つの大きなテーマに選びました。

大切なのは、単に「いい香りのホテル」をつくることではありません。香りを入口に、「私はこれが好き」「これは心地よい」と、自分自身の感覚に気づいてもらうこと。それこそが、KANSEI京都八条が目指している体験です。

ホテルが決めた香りではなく、「自分で選ぶ香り」

KANSEI京都八条の特徴的な体験の一つが、「フレグランスBar」です。いくつかの香りの中から好きなものを選び、ミニディフューザーを客室へ持っていくことができます。一方、客室そのものはあえて無香。最初からホテル側が決めた香りで満たすのではなく、その空間をどのように過ごすかを宿泊する人自身に委ねています。

「香りは好き嫌いがありますし、プライベートな空間だからこそ、押しつけにしたくなかったんです。自分で選ぶ過程が必要だと思いました」

これは、MY ONLY FRAGRANCEが大切にしている考え方ともよく似ています。MY ONLY FRAGRANCEでも、最初から「あなたにはこの香り」と答えを提示するのではなく、実際にいくつもの香りを感じながら、自分自身の感覚で好きな香りを選んでいただきます。KANSEI京都八条でも、スタッフが正解を教えるのではなく、基本的にはお客様自身の感性に委ねています。

実際に香りを選んでいるお客様を見ていると、「これいいな」「私はこっちが好き」と、感じ方は人それぞれ。その違いを見るのも楽しいと、お二人は話します。

「ホテルは、ホテル側から用意された体験をしてもらうことが多いと思います。でも、KANSEIでは“やってもいいし、やらなくてもいい”。自分に選択権があることを大切にしています」

自分で香りを選ぶ。ほんの小さな行動ですが、「自分は何を心地よいと感じるのか」を知ることは、自分自身を知ることでもあります。

香りと一緒に、お酒やお茶を味わう

館内では、香りをただ嗅ぐだけではない体験も用意されています。ラウンジでは、お酒と香りを組み合わせたペアリングを楽しむことができます。日本酒やビールには、それぞれに合わせた香りが用意されています。

香りを感じながら口にすることで、普段とは違った味わい方になるそうです。「体験された方から“新感覚”と言っていただくことも多いですね」と西島さん。

香りを単体で楽しむのではなく、味覚と組み合わせてみる。そうすると、普段何気なく飲んでいるものにも、新しい発見が生まれます。ここでも大切なのは、「正しい楽しみ方」を教えることではありません。「自分はこの組み合わせが好き」「この香りと一緒だと、いつもよりおいしく感じる」。そんな自分だけの感覚に気づくことです。

香りを嗅ぐと、旅先や大切な人を思い出す

話題はやがて、「香りと記憶」へ。

旅行が好きだという佐藤さんからは、旅先を「香り」で覚えているという話が出ました。アメリカには少し甘くてポップな印象の香り。ハワイにはココナッツを思わせる香り。インドネシアには、湿った土や雨のような香り。場所によって、それぞれ違う空気や香りがあるといいます。

また、場所だけではありません。幼い頃、お母様と映画へ出かけるときに感じていた香り。似た香りを感じると、その頃の記憶とともに、お母様のことを思い出すそうです。

「香りって、人のことをすごく思い出します」

香りを感じた瞬間、忘れていた景色や人との時間が突然よみがえる。MY ONLY FRAGRANCEにも、旅行で訪れた場所や、大切な人との思い出をイメージした香りをつくりたいと来店されるお客様がいます。香りは、目には見えません。それでも、ときには写真以上に鮮明に、そのときの記憶を連れてきてくれることがあります。旅をテーマにしたホテルと香り。その二つの相性の良さを、改めて感じるお話でした。

「香りのある人生」は、癒しにも、自信にもなる

最後に、MY ONLY FRAGRANCEが大切にしている「香りのある人生」について伺いました。「もともと香りに関心がない人が、香りのある人生を送るには、どんなきっかけが必要だと思いますか?」お二人から返ってきたのは、それぞれ違う視点でした。

一つは、癒し。眠る前やお風呂の時間、少し気持ちを落ち着けたいときや、自分自身の状態を整えたいとき。そんなときに「香りの力を借りたい」と感じる。香りは、おしゃれのためだけのものではありません。リラックスしたり、自分のコンディションを整えたりするために、そっとそばにいてくれる存在にもなります。

もう一つは、自信です。人前に立つ日、大切なプレゼンがある日、少し勇気がほしい日。お気に入りの香りをまとうことで、「今日の自分、ちょっといいかも」と思えたら、いつもより少し前に進めるかもしれません。

「自分の意志だけでは頑張れないときに、香りが背中を押してくれる。そんな存在になったらいいですよね」

香りの楽しみ方に、正解はありません。癒されるためでもいい。自信を持つためでもいい。大切な人を思い出すためでもいい。自分が必要だと思ったときに、自分に合う香りを選ぶ。それも、「香りのある人生」の一つの形なのではないでしょうか。

ホテルでの体験を、日常へ持ち帰る

KANSEI京都八条がこれから目指しているのは、ホテルの中だけで完結する体験ではありません。西島さんは、「KANSEIが日常にある暮らしを提案したい」と話します。旅行をするときだけ利用する場所ではなく、少し疲れたときに休みに来る。朝食だけ食べに来る。自分を整えるために、一泊してみる。そんな生活の延長線上にある「サードプレイス」です。

そして佐藤さんも、KANSEIでの気づきをホテルの外へ持ち帰ってほしいと話します。

「本当の幸せって、実は目の前にあるものに気づけるかどうかだと思うんです。自分の好きなものや、満たされている時間がすでに身近にあることに気づける場所でありたい」

ホテルで出会った香りを、自宅でも楽しんでみる。自分が心地よいと感じた時間を、いつもの生活でも再現してみる。KANSEIでの滞在をきっかけに、日常そのものが少し変わっていく。その考え方は、MY ONLY FRAGRANCEが目指す「香りのある人生をつくる」というミッションとも重なります。

香りは、もっと身近なところから楽しむことができます。今日飲んだお茶の香り、雨上がりの街の香り、誰かを思い出す懐かしい香り、眠る前に自分を落ち着かせてくれる香り。まずは、いつもの暮らしの中にある香りに気づいてみる。そして、「私はこれが好き」という自分の感覚を大切にしてみる。

KANSEI京都八条で過ごす時間は、そんな小さな気づきを日常へ持ち帰るための旅なのかもしれません。香りに出会い、自分の「好き」に出会う。その積み重ねが、毎日の景色を少しずつ豊かにしてくれるのではないでしょうか。

取材協力

KANSEI京都八条 所在地:京都府京都市南区東九条東岩本町15番2 アクセス:京都駅八条東口より徒歩6分

チェックイン:15:00 チェックアウト:11:00

※施設・サービスに関する最新情報は、公式サイト・Instagramをご確認ください。

公式サイト/SNS:

KANSEI京都八条 公式サイト

Instagram:@kansei_kyoto8

2025年3月に京都駅東南部エリアに開業した、「香り」をテーマとするホテル。ホテルKANSEIのコンセプト「五感で、自分を知る宿」のもと、KANSEI京都八条では香りを軸に「香りで巡る和ごころの旅」を提供し、フレグランスBarや、香りとお酒・お茶を組み合わせた体験などを通じて、五感を意識しながら自分自身の感覚と向き合う時間を提案しています。

MY ONLY FRAGRANCE
MY ONLY FRAGRANCE
専属調香師

オーダーメイドフレグランス専門店「MY ONLY FRAGRANCE」専属調香師です。香水の基礎知識や選び方、保管方法といった実用的な情報に加えて店舗でのフレグランス体験やブランドの想いまで、香りをより身近に楽しむためのコンテンツを発信しています。

運営情報
オーダーメイドフレグランス専門店
MY ONLY FRAGRANCE
店舗一覧はこちら