香りを選ぶように、お茶を選ぶ。
目次
京都・河原町「7T+(セブンティープラス)」に聞く、五感で楽しむお茶の時間
日々の暮らしの中で、ふと心に残る香りがあります。
朝に淹れた一杯のお茶の香り。街を歩いているときに出会った季節の香り。大切な人を思い出す、記憶の中の香り。
MY ONLY FRAGRANCEでは、「香りのある人生をつくる」をミッションに、お客様一人ひとりの記憶や感性に寄り添いながら、世界にひとつだけのフレグランスをお仕立てしています。
この公式コラムでは、香水という枠を少し広げ、日常の中にあるさまざまな「香り」や「五感の体験」に目を向けていきます。
お茶、食、装い、空間、ものづくり。香りを入り口に、暮らしを少し豊かにするヒントを、さまざまな企業やブランドの方々とともに探していく連載です。
初回に訪れたのは、京都・河原町にお店を構えるお茶の専門店「7T+」。
厳選された約90種類の茶葉を扱いながら、産地や銘柄だけに頼らず、お客様自身の感覚でお茶を選ぶ体験を提案されています。
今回お話をお聞きしたのは、店長の進藤さん。
お茶を選ぶ時間、香りを言葉にする接客、そして日常の中で五感をひらく楽しみ方について、お話を伺いました。

「先入観」を少し手放すと、五感が動き出す
7T+の扉を開けると、まず目に入るのは、整然と並べられた透明なシャーレ。
中には、それぞれ表情の異なる茶葉が美しく収められています。
特徴的なのは、店内にお茶の銘柄や産地、味の説明が大きく掲げられていないこと。
その理由について、進藤さんはこう話します。
「産地や知名度だけで選ぶのではなく、まずは目の前の茶葉を見て、香りを感じて、ご自身の感覚で選んでいただきたいんです」
情報が多いほど、私たちは安心して選べるように感じます。
けれど、ときにはその情報が、自分自身の感覚より先に判断を決めてしまうこともあります。
7T+では、あえて情報を前面に出しすぎないことで、お客様が茶葉そのものと向き合う時間を大切にしています。
色、形、香り、手に取ったときの印象。そこから生まれる「なんとなく惹かれる」という感覚が、お茶選びの入り口になります。
この考え方は、MY ONLY FRAGRANCEの香りづくりにも重なる部分があります。
私たちの店舗でも、香料名を先に伝えすぎず、まずは香りそのものを感じていただくことを大切にしています。名前や知識ではなく、自分がどう感じるか。その小さな感覚を信じることが、自分に合う香りと出会う第一歩になるからです。


お茶の香りは、時間とともに表情を変える
お茶の香りは、ひとつの瞬間だけで完結するものではありません。
乾いた茶葉の香り、お湯を注いだ瞬間に立ち上る香り、口に含んだときの香り、飲み終えたあとに残る余韻。それぞれの時間に、異なる表情があります。
進藤さんは、お茶の香りをお客様に伝えるとき、こうした変化を大切にしているといいます。
「シャーレを開けた瞬間の香りと、お湯を注いだ後の香りでは、印象が変わることがあります。さらに飲んだ後に残る余韻も、そのお茶の個性です」
香水にも、トップノート、ミドルノート、ラストノートという香りの移ろいがあります。
最初に感じる華やかさ、時間が経ってから現れる奥行き、最後に肌に残る余韻。お茶と香水は違うものですが、「時間とともに香りの印象が変わる」という点では、とても近い体験なのかもしれません。
7T+では、お客様がそのお茶をどんな時間に、どんな気分で楽しみたいのかを聞きながら、一杯の選び方を提案していきます。
朝にすっきり飲みたいのか、仕事の合間に気分を切り替えたいのか、夜にゆっくり落ち着きたいのか。お茶は、味わうものというだけでなく、その人の日常の時間に寄り添うものでもあります。

贈る相手の「日常の情景」まで想像する
ギフトとしてお茶を選ぶお客様も多いそうです。
そのとき7T+が大切にしているのは、単に「人気の商品」をすすめることではありません。
「贈る相手がどんな方なのか、普段どんなものを好まれるのかを伺います。お茶だけでなく、そのお茶と一緒に何を食べるのか、どんな時間に飲むのかまで想像しながら選んでいきます」
たとえば、和菓子と合わせるのか、チョコレートと合わせるのか、チーズケーキと楽しむのか。
同じお茶でも、隣にあるものや飲む場面によって、感じ方は少しずつ変わります。
印象的だったのは、「一番人気はどれですか」と聞かれても、安易にひとつを挙げるのではなく、その方に合うものを一緒に探していくという姿勢です。
茶葉の背景や生産者の思いを知っているからこそ、順位ではなく、目の前のお客様にとっての一杯を大切にする。
その接客には、商品を売るというより、その人の暮らしの中にある時間を一緒に想像するような温かさがあります。
MY ONLY FRAGRANCEでも、大切な方へのギフトとして香水を選ばれるお客様がいらっしゃいます。
そのときに大切なのは、相手の年齢や性別だけではなく、どんな時間を過ごしてほしいのか、どんな気持ちを届けたいのかを想像すること。お茶も香水も、贈る人の思いをのせて、相手の日常にそっと届くものなのだと感じました。
香りや味わいを、前向きな言葉に変えていく
香りや味わいを言葉にすることは、とても難しいものです。
甘い、すっきり、香ばしい、華やか。言葉にした瞬間に、こぼれ落ちてしまう感覚もあります。
7T+で印象的だったのは、お客様にお茶の個性を伝えるとき、できるだけ前向きな言葉に置き換えているという話でした。
たとえば、お茶や抹茶には「苦味」や「渋み」があります。
それらは人によっては少し苦手に感じられることもありますが、同時に、そのお茶の輪郭や奥行きをつくる大切な個性でもあります。
進藤さんは、それを単に「苦い」「渋い」と伝えるのではなく、深みや香ばしさ、余韻として感じられるように言葉を選ぶといいます。
その表現によって、お客様は自分がまだ知らなかったお茶の魅力に出会うことができます。
これは、香りの接客にも通じる考え方です。
ある人にとって強く感じる香りが、別の人にとっては安心感になることがあります。すっきりした香り、甘い香り、落ち着く香り。その感じ方に、ひとつの正解はありません。
大切なのは、お客様自身の感覚を否定せず、その言葉を手がかりにしながら、まだ出会っていない好みへと一緒に進んでいくこと。
7T+の接客には、そうした丁寧な対話の姿勢がありました。


日常の中で、香りを意識する小さなコツ
最後に、日常の中で香りを楽しむためのコツを伺いました。
進藤さんが教えてくれたのは、無理に分析しようとしすぎず、その日の自分の感覚を素直に受け止めることでした。
「同じお茶でも、日によって感じ方が変わることがあります。体調や気温、気分によって、心地よく感じる香りも変わるんです」
今日はすっきりした香りが心地よい。
いつも好きなお茶が、今日は少し強く感じる。
逆に、普段は選ばない香りに惹かれる日もある。
そうした小さな変化に気づくことは、自分の状態に目を向けることでもあります。
お茶を淹れる時間、香水を纏う時間。その一瞬に、「今の自分は何を心地よいと感じているのか」と耳を澄ませてみる。
香りを楽しむことは、特別な知識がなければできないものではありません。
まずは一杯のお茶から。あるいは、今日の自分に合う香りから。
日常の中の小さな香りに気づくことが、暮らしを少し豊かにするきっかけになるのだと思います。
終わりに
お茶も香水も、誰かにとっての正解を選ぶものではなく、今の自分が「いいな」と感じるものに出会う体験です。
7T+でのお話を通して感じたのは、香りや味わいを選ぶ時間には、自分の感覚を信じる楽しさがあるということでした。
そして、その感覚に寄り添ってくれる人がいることで、選ぶ時間はより豊かな体験になります。
京都の街を歩くとき、ふと立ち寄ったお店で出会う一杯のお茶。
その日、自分のために選ぶ香り。
どちらも、日常の中に小さな余白をつくり、記憶に残る時間へと変えてくれるものです。
香りのある人生は、特別な日だけにあるものではありません。
何気ない毎日の中で、自分の感覚に少しだけ目を向けることから始まります。
今回の取材にご協力いただいた7T+の皆さま、ありがとうございました。
取材協力
7T+(セブンティープラス)
所在地:京都府京都市下京区塩屋町73番地1
営業時間:11:00-19:00
定休日:不定休
※営業日・定休日に関する最新情報は、各店舗のInstagramストーリーズにて随時発信いたします。
公式サイト/SNS:
https://www.instagram.com/7teaplus_kyoto
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