香水を衣服につけるメリットと注意点。シミを防いで香りを長持ちさせる方法
朝つけた香水がすぐに消えてしまう、時間が経つと汗や皮脂と混ざって匂いが変わる、というご相談を、店頭のヒアリングで多く伺います。そうした場合、香水を肌ではなく衣服につけることで解消できる場合があります。
調香師は香りを評価する際、ムエット(試香紙)と肌の両方で確認を行います。これは、香料が付着する素材によって揮発(蒸発)する速度が変わるためです。
今回は、衣服に香水を付けるメリットとデメリット、繊維の素材による違いを解説するとともに、衣服を傷めずに香らせる具体的な方法を解説します。
既製品でシミが心配な方には、調香の段階で色の薄い香料やアルコール比率を調整できるオーダーメイドという選択肢もあります。調香の段階から衣服への影響を考慮し、色の薄い香料を選別したりアルコールの比率を調整したりするため、大切な衣服への影響を抑えながら香りを長持ちさせられます。
目次
肌につける場合と衣服につける場合の違い
肌に香水をつけた場合、体温によって香料が温められるため、トップノートからベースノートへと段階的に香りが変化していきます。
これに対して衣服などの布地につけた場合は、体温の影響を直接受けにくいため、香料の蒸発スピードが穏やかになります。そのため、肌につけると香りの変化をはっきりと感じられ、衣服につけると最初の香調が長持ちしやすいという違いがあります。
衣服に香水をつける3つのメリット
衣服に香水をつけることには、肌につけるときにはない調香上のメリットがあります。特に汗をかきやすい夏場や、肌が敏感な方には向いた方法です。具体的なメリットは以下の3点です。
ウッディやムスクの香りが長く続く
まず、香りの持続時間が長くなる点が挙げられます。香料のなかでも、ムスク、サンダルウッド、シダーウッド、アンバーなどのベースノートに使う成分は、もともと揮発しにくい重い分子構造を持っています。
これらが衣服の繊維に付着するとその場に長く留まるため、翌日になってもふんわりと香りが残ることがあります。実際に調香師も、服に残った翌日の残り香で、その香水本来の香りを確かめます。
汗と混ざっても香りが変わりにくい
次に、調香師が組み立てた香りの構成がそのまま保たれる点もメリットです。肌につける場合、香水は皮脂や汗、肌の酸性度(pH値)の影響を直接受け、人によって異なる匂いに変わることがあります。しかし衣服につける場合は、皮脂や汗の影響を受けないため、調香師が組み立てた通りの香りが届きやすくなります。湿度が高い日本の夏でも清潔な印象を保ちやすくなります。
肌荒れを気にせず香りを楽しめる
また、肌への刺激を避けられる点もメリットです。香水に含まれるエタノールは、敏感肌の方にとって赤みや痒みの原因になります。また、ベルガモットなどの一部の天然香料には、紫外線に反応して皮膚に炎症を起こす光毒性を持つものもあります。
歴史を遡ると、17から18世紀のヨーロッパでは肌ではなく、革手袋に香りを染み込ませたパフュームドグローブや、ハンカチに香りを移して楽しむ文化が主流でした。当時は人に近づいたときにふわりと感じる程度の強さが好まれており、衣服につけて優しく香らせる手法は、周囲への配慮(香害の防止)としてもおすすめです。
衣服に香水をつけるデメリットと素材ごとの特徴
多くのメリットがある一方で、店頭でお客様から伺う、衣服ならではのデメリットや注意すべき点もあります。
衣服にシミや変色が残ってしまう恐れがある
特に注意すべき点はシミのリスクです。オードパルファムなど香料濃度の高い香水は油分の比率が多く、生地につくと油染みになりやすい傾向があります。また、もとから黄みや茶色みの強い香料を含んだ液体を、白シャツやシルク、サテンのブラウスにつけると、色素が定着して取れなくなることがあります。
繊維の種類によって香りの残り方が異なる
綿(コットン)、ウール、カシミヤなどの天然繊維は、糸の表面に細かな凹凸が多く、香料の粒子が留まりやすい性質を持っています。そのため、同じ量の香水であってもニットなどの天然素材は比較的香りが持続しやすくなります。
逆にポリエステルなどの化学繊維は香料の吸着の仕方が異なるため、香りの感じ方が変わる場合があります。調香師がサンプルを評価する際も、衣類の素材によって印象が変わることは珍しくありません。シルク、レーヨン、革製品は特に水やアルコールに弱いため、衣服の素材を確認することが欠かせません。
次に着るときに別の香りと混ざってしまう
ウッディやムスクなどの香気成分は定着がよく、洗濯しても繊維の奥に微かに残ることがあります。店頭でも、お気に入りのコートに前の香水が残っていて、新しい香水がつけられないというご相談をよくいただきます。この残った香りが、次に着る際につける別の香水の香調に影響を与えたり、複数の香料が混ざって全体のバランスを崩したりする原因になります。
衣服を傷めずに香水をつける方法
お気に入りの衣服にシミを作らず香りを楽しむには、いくつかの手順が必要です。ここでは、調香師が店頭などで実践している具体的な手法を4つ紹介します。
距離を保つ:20から30cm以上離し、霧を面で付着させる
見えない場所につける:裏地や縫い代、ポケットの内側など、目立たない場所を選ぶ
アルコールを飛ばす:着用する15分前にスプレーし、アルコール分を完全に飛ばす
事前テストを行う:裾の裏などでテストし、変色しないかを確認する
一箇所に集中してスプレーすると、付着した部分の液体の濃度が高まり、シミになりやすくなります。肌に近づけて線でつけるのではなく、しっかり離して霧の下をくぐるように面で付着させることが重要です。着用したままつけるのではなく、着る前にハンガーにかけた状態でスプレーすると、生地を傷める恐れがあるアルコールを、着用前に蒸発させられます。
衣服に吹き付けるおすすめの位置
調香師は、自分の鼻元だけで強く香らせることではなく、すれ違った瞬間や、脱いだコートからふわりと立ち上る残り香を意識して香水を設計しています。衣服につける香水は、香りを抑えて周囲に届かせたい場面にも向いています。使用するシーンや好みの強さに合わせて、吹き付ける位置を使い分けるのがおすすめです。
しっかり香らせたいなら上半身を活用
香りをはっきりと広げたい場合は上半身が向いていますが、首元など鼻に近い位置につけすぎると、鼻がその香りに慣れてしまい、周囲にどれほど強く香っているか気づきにくくなります。おすすめはジャケットの内ポケットや裏地です。動くたびに内側から香りが立ち上り、表地にシミを作るリスクも防げます。
さりげなく香らせたいなら下半身を活用
オフィスや食事の席など、周囲への配慮が必要なシーンでは下半身を活用します。具体的にはスカートの裾やパンツの足首付近です。香料の分子は体温や空気の流れによって下から上へと立ち昇る性質があるため、足元に1プッシュすると、歩く動きに合わせてほのかに香りが戻り、落ち着いた印象を与えられます。万が一シミなどの問題が起きても、目立ちにくいという利点もあります。
衣服に付着した香水のシミや匂いを落とす方法
注意をしていても、誤ってシミを作ってしまうことがあります。その場合も焦って生地をこすってはいけません。繊維の奥に入り込んだ香料を取り除くための対処法を解説します。
ついてすぐのシミには、アルコールを布や綿棒に含ませ、裏側に当て布をしてトントンと優しく叩く方法が有効です。匂いが取れない場合は、弱酸性の香料を中和する重曹を使ったぬるま湯でのつけ置き洗いが効果的です。ただし、シルクやウールなどのデリケート素材は生地を傷める恐れがあるため、クリーニング店に香水のシミであることを伝えて依頼することをおすすめします。
アルコールを用いた初期のシミ抜き手順
シミの部分の裏側に、汚れてもいいタオル(当て布)を敷きます。 別の布や綿棒にアルコールを含ませ、シミの上からトントンと優しく叩きます。 こすらず、下のタオルに汚れを移し取るように繰り返します。 帰宅後、すぐに通常通り洗濯してください。
重曹や酸素系漂白剤による消臭洗浄
40度前後のぬるま湯に重曹と酸素系漂白剤(色柄物にも使えるタイプ)を溶かし、繊維の奥の汚れを分解させるように30分から1時間ほどつけ置きしてください。
専門業者(クリーニング)への依頼
デリケートな衣服はプロのクリーニング店に依頼しましょう。受付時には香料のシミがついていると具体的に伝えてください。原因が分かれば、最適な溶剤を選んで的確に処置してくれます。
オーダーメイド調香による成分の調整
衣服に香水をつける方法を身につけても、既製品の香水では液体自体の色が濃すぎたり、香料の主張が強すぎたりといった調合上の限界から、既製品では対応しきれない場合があります。
衣服も肌も大切にしながら好みの香りを楽しむ方法として、成分の比率や濃度をゼロから設計するオーダーメイドという選択があります。
ご自身のライフスタイルに合わせて1滴単位の比率を調整すれば、強すぎず弱すぎない心地よい濃度で作成することができます。
まとめ
香水は肌の上で完成するとも言われますが、衣服につけることで初めて感じられる香りもあります。朝まとった香りが、夕方に袖口からふわりと香る。その変化や残り香を楽しむのも香水の良さです。
MY ONLY FRAGRANCEでは、アドバイザーがお客様の理想を形にするオーダーメイドの調合を行っています。お気に入りの服にも使いやすい、特別な香りをご提案します。ご興味のある方は、ぜひ店舗にお越しください。
※本記事では、一般的な香水の知識や楽しみ方についてご紹介しています。
MY ONLY FRAGRANCEでお作りいただけるフレグランスは雑貨としての取り扱いとなります。お肌への直接使用はお控えいただき、衣服やハンカチ、布製品などに軽く吹きかけて香りをお楽しみください。